「またオモチャかよ?」「はい、そうですよ。」と開き直ってみる。
このくらいしか生きてる楽しみなんてないんだ、勘弁してくれぃっ!
今回のお品は、1/43 レイトンハウス・マーチ881・ジャッド(1988年型)です。
約1ヶ月前に入手したブツでございます。
メーカーはSpark model社(
http://www.sparkmodel.com/)。市販車やル・マン24時間のレーシングスポーツカー系統を主力にしているようです。F1もヒストリック系や他社が出さないスキマ系(苦笑)を狙ってラインナップしていますが、傍系といえるでしょう。
いずれにせよ、希少品に違いはありません。F1を主力にしているMINICHAMPS社などはまぁ出さないだろう代物です。
本当はこれじゃなくて1990年型のCG901B('90年フランスGP仕様)が激烈に欲しいんですが、製品化されていないものは手に入りませんので、えぇ。
まずはオーバービューです。
F1界希代のデザイナーであり、現在も先端を行く奇才:A・ニューウェイの、これがF1デビュー作です。
もう21年も前のマシンですが、そのスタイリングにはあまり古さが感じられません。
近年のマシンに比べればややずんぐりした印象は受けますが、基本的なシェイプ(というかデザインコンセプト)は、レギュレーションの影響とそれに適応した部分を除けば、現在のF1マシンと大きな違いはありません(一つ大きく違うのはノーズですね(後述))。言うなれば、今のF1マシンの直系のご先祖様でしょう。
当時は今と違って、まだまだ個性的なスタイリングのマシンが沢山走っていた時代で、これもその一つだった訳ですが、コイツの基本思想が生き残ったという事は、ニューウェイの先見性が如何ほどのものかを示していると思います。
モデルとしての出来は、細かいところにまで手の入った丁寧なもので、MINICHAMPS社のものに引けを取りません。ただ、接着剤のはみ出しがあったのは残念。って、その程度の不良はMINICHAMPSでもよくありますので。
少し角度を付けて撮影してみましたよ。
さすがに今となっては実車と比較するのは困難ですが、印象としては非常にいいものです。
この角度だとかなりスマートに見えますね。有り体に言ってカッコいいです。不細工な今年(2009年)型のマシン群なんか目じゃありませんねー。
左はこの時代に特有の大型ディフューザー。右のハイノーズ処理との組み合わせでダウンフォースを稼ぐ仕組みです。
※横道に逸れますが、「ハイノーズの元祖」を、1990年のティレル019だと勘違いしている人が多いですが、ハイノーズ自体は、
「前輪と後輪の間のフロアはフラットでなければならない」
という「フラットボトム規定」が出来た1983年から存在したアイデアで、ティレル019以前にも幾多のマシンが備えたシステムです。
以下はブラジルだかどこかのサイトからの拾いものですが、マーチ881のハイノーズ構造と、ティレル019との比較をした図です。
キャプションがポルトガル語なので読める方は少ないと思いますが、左は「ボトムビュー」、右は「サイドビュー」と書いてあります。
この図でわかるのは、ティレルはフロアパネル「だけ」を前輪まで伸ばす事でレギュレーションの文言を満たしたということです。結局これはロクな議論もないまま(と記憶しています)合法となり、現在まで続く手法となりました。
あとの事はどこかのF1講座でも見て頂くとして。
※あーあと、横道ついでに。
時折、このマシンの事を「CG881」と表記しているのを見かけますが、それは誤りです。「CG」が冠されるようになったのは翌年(1989年)型「CG891」からで、それ以前のマーチのマシン名は単に数字だけでした。
これは、当時マーチのエースドライバーだったI・カペリのマネージャーであるC・ガリボルディが1988年末に事故で他界したのを受け、哀悼の意を表するために故人のイニシャルである「CG」をマシン名に冠する事になったためです。
ところで、このモデルにはタバコデカールが付属する(注:現在はタバコ広告規制のため、模型にもタバコ関連のロゴマークは貼って出荷できないんですよ。例え当時の実車にはあってもね。)と説明があったんですが、どこにも見当たりません(汗)。
それ以前にマーチのマシンにタバコのスポンサーは無かったはずだが…と思っていたら…
こんなところに貼り付けてありました(苦笑)。
しかし、これ一体どこに貼るんだろう??と考える事しばし。…わかりました。マシン本体じゃありません。
…ヘルメットはともかく、上腕部みたいなこまいところに貼れるかい!ドライバー人形は固定で取り出せないんだぞ!
まぁ、デカール用の接着剤を手に入れるまでは今のままですな。
※ちなみに当時はマールボロ(フィリップモリス社)がチームとは別にドライバー個人に対するスポンサードプログラムを行っており、それを受けているドライバーは「マールボロドライバー」と俗称されていました。
このマシン(No.16)を駆るカペリもその一人だったので、ヘルメットやスーツにマールボロロゴを付けていた訳です。
最後に、以前購入した、同じくA・ニューウェイがデザインしたウィリアムズFW14・ルノー(1991年)と並べてみます。
FW14は僅か?3年後のマシンだけあって、基本的シェイプはほぼ同一と言って差し支えないでしょう。FW14の方が若干ノーズが高く、そのためウィングの取り付け部分の形状が控えめに曲面となっています。
こうして並べてみると、マーチ881のエンジンカウルが妙に大きく感じます。これは恐らくですが搭載エンジンの問題と思われます。
マーチ881のエンジンは市販のジャッドCV・V8エンジンですが、バンク角が90°で幅が大きく、またベースが古いホンダF2用エンジンでそれに改造に改造を重ねた九龍城のような代物で、V8としては無駄に大きかったものです。
ニューウェイは空力を重視してエンジン全体をカウルで覆う選択をしたため、こうなったのでしょう。実際、同じエンジンを搭載するウィリアムズFW12も背中の大きなマシンです。
対して、FW14のエンジンカウルがすっきりとコンパクトにまとまっているのは、搭載しているルノーRS3・V10エンジンがバンク角67°と幅が狭く、また新設計のワークスエンジンなのでシェイプアップがよく進んでいて小型だった事、それによりエキゾーストパイプの取り廻しも低く抑えられた事に依るのではないかと。
それにしてもこの2台、881のレイトンブルーといいFW14の日本企業ロゴといい、バブル臭がプンプンしますなぁ。
今となってはウソのような時代でした、という事で締めとしますよ(苦笑)。